No.4 ...当たり前の幸福
特別な用事もなくて何となく手にとる受話器今すぐあいたい
何もかもわからなくなり困る吾の傷も痛みも包み込む君
謝って戻れるものでもないからとかけぬ電話の理由付けをする
本当のことが見えない焦燥に君責めしこと心に痛し
二時までは待ってみようと真夜中の鳴らぬ電話をじっと見守る
あんなにも欲しかった言葉を簡単に今頃になって君はくれるけど
受話器越しひと月ぶりに話す声今は時間を共有している
会えないとわかると急に失くすのがこわくなりけり恋というものは
意図的に他の名前を多用して戻れぬ恋に予防線を張る
冷え切った恋を続けるくらいならさよならという嘘をください
傘の中肩がぶつかるほどの距離それでも君の心得られず
悲しいという感覚がマヒすればいつかは慣れぬ痛みも傷も
気の強い我の弱さを指摘して消えちゃうなんて君はひどいわ
一人ではどんなに遅く帰っても急ぐ必要のない帰り道
ひたむきにただ真直ぐに我想う君の気持ちに応えたし我も
恋という文字を当て字で『孤悲』と書く万葉の歌にはっとしており
許容量こえる想いをそそがれてあふれた分だけ苦しくなりぬ
彼女より我を好きだと君は言う戻れぬ恋はいつも美し
幸せになれよと言いし人ありきその目も見ずにうんと頷く
何気なく続いてゆける毎日が当たり前のようにある幸福
想い出が綺麗にくずれ一枚の絵に溶けてゆくクリスマス・イヴ
一年の想い出すべてに君がいてその何もかもが宝物となる
(大学時代2/二十二首)