銀色の月について

呼吸をするように等身大の日常を、
スナップ写真を撮るように一瞬の感動を。
そんな風に歌をかきつづけてゆきたいと思っています。(なんちって)



高校時代片道40分(!?)の自転車通学をしていました。

遅刻ギリギリの朝は常に猛ダッシュでしたが、帰りはのんびりゆらゆら。放課後は大抵音楽室でピアノを弾いていて、門を出るのは夕方5時前後。道端の花に見とれたり、のんきに歌ったり(あやしいヒトだったかもなァ・・・)しながらの帰り道は割と楽しいものでした。

秋の日のことだったと思います。いつものように自転車で帰宅する途中、何の気なしにふと空を見上げました。完全な闇と呼ぶにはまだ早いものの、太陽はすっかり沈んでいます。夕暮れのひんやりとした空気の中、私はそこに息をのむほどに「美しいもの」を見たのです。

「美しいもの」。それは月でした。秋特有の澄んだ薄紫色の空を背景に、ナイフで削ったような細い三日月が静かに輝いていました。凛とした靭さをたたえ、まるで気品と気高さに満ちた宝石のように。


繊細で張り詰めたような美しさ紫の空銀色の月
(短歌集『銀色の月』より)

その時、この歌が心にすっと浮かんできました。小さな声で、繰り返しそっと声に出してみました。中学3年の時から短歌を始めて以来、短期間に数多くの歌をつくりましたが、この歌は私にとってそれまでとは決定的に違うものでした。

言葉を選ぶのではなく(通常「選ぶ」ことは必要だと考えています)、言葉の方から心に近づいてくるような感覚。感動と言葉とが確かに重なった瞬間でした。

どんなにか拙い歌かもしれません。でも、どこかに自分の原点を求めるのならば、この歌こそが私のそれのような気がします。あの秋の日から随分と時は流れましたが、今も「銀色の月」は記憶の中に強く輝いています。


2005年6月 / 銀色の月管理人:柚子

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